八島高明の姓名判断教室1

日本で生まれた占術ー姓名判断

 

昭和の時代から流行している占術の中でスタンダードな位置を占めているのが「姓名判断」という占術です。実はこの姓名判断は日本人が創出したものであり、外国にはありません。姓名判断は昭和の初期に活躍した熊崎健翁という人物によって体系化され、昭和初期に爆発的に流行して全国に普及しました。

 

姓名判断とは何か

姓名判断とは名前の字画を数えて吉凶を判断する占術です。その人の性格や運勢がわかるとされています。昭和の初期に熊崎健翁氏によって創出されたこの占術は戦前に爆発的な流行を見せ、さらに戦後もベビーブームに乗じて全国に広がっていきました。現在、どこの本屋に行っても占術コーナーに姓名判断の本が置かれています。

 

その点から単純に「姓名判断は当たる」と思いがちですが、占術としての価値は統計的な面から検証しなければなりません。ある人はこう言うでしょう。「姓名判断が当たるからこそ本が売れているのだ」と。占術の愛好者にもそのように主張する人がいます。ただ売れる=本物というわけではありません。実は姓名判断の本が常に売れるにはそれなりの理由があるのです。

 

姓名判断の本が売れる理由

なぜ姓名判断の本は売れ続けるのでしょうか。そして姓名判断が常に占術のスタンダードな位置にあるのはなぜでしょうか。その理由は主に2つあると思います。1つは毎年生まれてくる「赤ちゃんの名付け」に利用されていることです。現在、日本では100万人近い新生児が誕生しています。親であれば誰でも生まれてきた我が子の幸福を願うものです。そうした親たちが「名付けの本」を毎年、大量に購入することになるので姓名判断の本は「常に需要がある」ということになるのです。

 

もう一つの理由は「日本が印鑑を多用する国である」ということです。これは多くの人が経験していることですが、姓名判断をして悪い結果が出ると、なぜか印鑑の購入を促されるのです。その理由は「良い印相の印鑑を使って悪い姓名を補う」という発想法です。かく言う私も占術研究をする前に高い印鑑を購入したことがありました。

 

印鑑が重要なものであることは理解できます。文書などを簡単に偽造させないためにも必要かもしれません。しかし「開運」という名のもとに売られる印鑑には疑問を感じるのです。本当に個人の運命の良し悪しを印鑑の霊力で変えることができるのでしょうか。まずはその点から検証してみなければなりません。もしそれが「お守りのようなもの」と言われれば、それは印鑑でなく神社のお守りでも代用できるのではないでしょうか。さて、姓名判断を占術とするには様々な疑問が出てきますが、その謎を少し検証してみましょう。

 

姓名判断の歴史とは

日本中で使われている姓名判断の大本になっているのが、昭和初期に活躍した熊崎健翁(1881~1961)という人の創出した「五聖閣流」という判断法です。熊崎氏はもともと時事新報社という新聞社の記者でしたが、運命学に興味を持ち、独自に易学、推命学(四柱推命)、骨相学、観相学、家相学などを研究していたようです。昭和5年、熊崎氏が数十年にわたる研究の成果を雑誌「主婦の友」の付録として発表すると、これが大反響を呼びます。ついで同年5月に実業の日本社より「姓名の神秘」を刊行します。これも爆発的な反響があり、熊崎式の姓名判断が日本全国に広まっていきました。

 

熊崎式の姓名判断とは

その反響を姉妹版として出した「運命の神秘」において「無断で熊崎の高弟を詐称し、全国各地を徘徊する不正漢が続出している」と熊崎氏自身が嘆いています。実は熊崎氏が姓名判断を創出する以前にも昔から姓名判断という占術法があったようで、姓名の意義、陰陽の配置、音霊音質、天地五行、数理の霊導という考え方があったと言います。ただその多くは自然消滅し、現在の姓名判断の多くが熊崎式になっています。熊崎氏はこれらを独自に改良、応用したものと考えることができます。熊崎氏が自著で述べているところによると、熊崎式の特徴は以下の点です。

 

1)天地人の三才を使用する。

2)五格部象法を使用する。

3)康煕字典を使用する。

 

姓名判断のやり方

姓を天格、姓+名を人格、名前を地格といいます。天格と地格の対になる数を加算したものを外格、すべての画数を合計したものを総格といいます。姓名をこれら5つの要素に分解して総合的に姓名の吉凶を判定します。ちなみに現在は旧字体を使わずに新字体の略された文字で判断する方法が主流ですが、本来の熊崎式は「康煕字典」に準拠して旧字体で姓名の画数を数えるようです。

 

姓名は運命に影響するのか

姓名判断では名前の画数の吉凶からその人の運命が読めると考えます。ただ熊崎氏の著書を詳しく読んでみると「たとえ同姓同名であっても同じ運命になることはない」と書かれています。

では、名前の吉凶とは何かという疑問が浮かんできます。熊崎氏の説明によれば、姓名の画数には運命を誘導する「誘導力」があることを述べています。つまり催眠術師が被験者を言葉で誘導するように、人の名前にもそのような作用があり、知らず知らずのうちに名前に即した運命をたどることになる、というのです。

 

熊崎氏の著書を読んでみると、昭和初期とはいえ大ベストセラーになっただけの説得力があり、現代でも興味深く読める内容となっています。ただその内容は自説の根拠と説明に終始していますが、今でもこの本を読む人は熊崎氏の説得力に大きく感化されることでしょう。では次回に続きます。

 

姓名判断教室2へ続く

 

 

2021年01月25日