八島高明のタロット教室4

タロット人気の秘密

タロットが世界中で使われるようになったのは当時の作家や占術師、魔術師などの活躍によるところが大きいものです。彼らは人間のもつ未知の才能に気づいていたとも言えるでしょう。有名なところでは作家のクール・ド・ジェブラン、魔術師のアレイスター・クロウリー、エリファス・レヴィ、黄金の夜明け団のウエイト、占術師のエッテイラなどですが、彼らの広範な活動により世界中にタロットの魅力が広がっていきました。

 

現代においてもタロット=神秘的なものというイメージがあります。これは魔術師などが盛んに利用した影響によるものでしょう。ただ魔術師がタロットを利用したことは別に不思議なことでもありません。魔術とは本質的に「内的な自己と向き合う行為」だからです。これはタロットと共通する要素です。

 

魔術師は様々なシンボルを利用します。シンボルとは言わば潜在意識の回路を開くための道具なのです。たとえばナチスドイツは集団を統率するために「鍵十字」を利用しました。これは国家なども同様で「国旗」を使って国民を統率するものですし、宗教なども同じように仏像を使ったり、十字架を使ったりするものです。人間はこうしたシンボリックなものを利用することで、普段はあまり意識することのない潜在意識を上手に使っているのです。

 

無意識にアクセスするタロット

タロットカードはこうした人間の潜在意識の特徴を構造化して応用したものと考えることができます。そしてタロットの技法とは潜在意識の中にある様々なシンボルを使って、質問に対する答えを上手に引き出すための道具でもあると言えるのです。これは東洋の易も同じ考え方であり、易もやはり自然と人間の関係性を東洋風に記述したものなのです。そのスタイルはまったく異なるように見えますが、本質的には同じ手法を応用していると言えるでしょう。

 

タロットはなぜ当たるのか

タロットを実際にやってみればわかりますが、タロットは占者が問いかけたことに対して的確な答えを出すものです。もちろんすべての問いに答えられるものではありませんが、実際にタロットを経験してみるとその答えの「的確さ」に最初は驚くものです。

 

では、その「答え」は誰が出しているのでしょうか。実はタロットの得意な人に聞いても「誰が答えを出すかはわからない」と言うことでしょう。タロットの本にもほとんど書かれていません。タロット本に書かれているのは単に「カードの意味」と「使い方」にすぎないのです。私はこの謎を解くためにも自分自身でタロットを何度もやってみたものです。そこでわかったのが、タロットに回答を出しているのは実は「自分自身」であることを発見しました。自分自身とはいっても、人間の心理構造は単純なものではありません。

 

人間の意識は大きく分類して3つにわけることができます。まず中心になるのは「私」という自分自身。これは日常生活を送っている自己であり、この文章を読んで思考している本体です。これが「自己」です。

 

この上にはもう一つの自己があります。これを「超自我」と言います。これは精神分析の創始者フロイトが自身の研究から発見したものですが、どんな人間にも自我の上にもう一つの超自我があり、人間生活の善悪などを検閲しているとフロイトは言います。要するに「人間としての良心」みたいなものにたとえることができます。誰でも悪事を思いついたときにそれを検閲しているもう一人の自分がいます。「悪いことをすると罰が当たるよ」と心の中で言う本体、それが「超自我」なのです。

 

誰でもこの超自我を持っています。また超自我の反対の存在として作用しているのがフロイトのいうエス、つまり人間の欲望や感情が混ざり合った「本能意識」です。この意識は自身の欲望に忠実で「欲しいから盗む」「憎いから虐める」など、多くが人間として他人に見せたがらない「恥の意識」です。衝動的で性欲にも深く関係しています。これをまとめると人間には3つの意識作用があることになります。

 

1)超自我・・善意。正義。良心。

2)自 我・・思考。判断。悟性。

3)本 能・・性欲。欲望。闘争。

 

この3つのうちタロットを使い質問をしているのが「自我」です。そしてそれに回答を与えているのが「超自我」なのです。ただ超自我は万能な存在ではありません。あくまでも自己の「上位意識」ですから本質的には自分自身ともいえるものです。ですから特に自分自身に関する質問には間違った回答がよく出るものです。これは自分自身への過信がタロットに影響するからでしょう。

 

超自我は自我を導く「親のような存在」です。人間の善意ある行為、良識的な判断、強い意志力などはこの超自我からやってきます。また超自我の中でも優れたものは、いわゆる超能力を使うこともできるので近未来を予知したり、他人の深層心理を読み取ったりすることも可能になるのです。

 

タロットに上達する方法とは

こうしたタロットの本質がわかれば、タロットに上達するのも難しくはありません。タロットが超自我と接触する手法であることが正しくわかれば、おのずと的中率もあがっていくでしょう。しかし超自我は誰でも活発に機能しているわけではありませんから、タロットがいつも正しい回答を与えてくれるというわけでもないのです。ただ多くの人はタロット術を長年続けることで、確実に上達していくものです。これはスポーツの修練を長年続けた人がスポーツで上達するのと同じことです。

 

タロットに過信は禁物

私も長年タロットを愛用しています。ですがタロット術を過信してはいけません。回答を与えている超自我といえども、何でも知っているということはありませんし、また自分自身の過去のカルマなどに関することは特に当たらないものです。私はかつてタロットの的確さに魅了され、何でもタロットを信じて行動したことがありましたが、時には過信するあまりに大きな失敗をしたことがありました。それ以来、私はタロットは占術のメインとして判断に使うのではなく、あくまでも副次的に補助として使うようにしています。

 

タロットをやる目的とは

タロットをやり始めた人は、最初はその魅力にとりつかれるものです。私も当初はタロットの回答は「神的な次元から来る」と信じていたものです。もちろん今では自分の「超自我」が回答を与えていることを知っていますが、ただタロットの本質を考えるとき、質問に的確に回答を与えるよりも、実は超自我と交流する回路を開くという大切な意味があることを知りました。

 

実はタロットはその交流回路を開くための道具であり、タロットそのものは神聖なものでもなく、また神的な次元とも関係はないことも見えてきました。こうしたタロットの本質がわかれば、タロットの技法やシンボルにあまり固執することなく、もっと自由にやり方を変えても大きな問題ではないことに気づくでしょう。タロットや易もこうした自我の構造を応用することによって成立する占術ですから、これらを学ぶ意味も実はそこにある、と気づくことが大事に思えるのです。(タロット了)

 

 

2021年01月22日