算命学は四柱推命の一流派か
さて、算命学は一般的な四柱推命とは異なり、独自の用語や技術を使用していますが、占術のジャンルという点からいえば、やはり「四柱推命の一流派」ということになるでしょう。
たとえば1)生年月日を使用する点、2)命式と同じ「命盤」の構造的な使い方、3)使用している10大主星=通変、12大従星=12運など、その基盤構造がほぼ同じ内容で構成される点です。それを考えると、算命学のルーツは子平、八字、命理と呼ばれる中国の四柱推命と同じものだと思えます。日本では一般的に「四柱推命」の名称で呼ばれていますが、そもそも四柱推命という名称は日本で生まれたものですから、あえてこれらを区別するのは難しいようです。
日本国内をみても四柱推命はすでに多数の流派に別れており、命式の出し方や大運の出し方、あるいは解釈の違いなどにおいても大きな違いがありますし、その背景となる技術や理論も異なるものです。ですから、その中から算命学のような独自の四柱推命の一流派が生まれても、特に不思議というわけでもありません。
人それぞれ考え方や価値観、理解の方法も異なるので、これらがみな違っていても大きな問題とは言えません。ただし、占術としての価値を「正確性」や「的中率」に求めるのであれば、そこには大きな違いがあるのは間違いありません。それは後ほど検証していきましょう。
算命学の起源について
算命学ではその起源を中国の戦国時代(紀元前403~前221)にあると言います。そしてその創始者を鬼谷子(戦国時代の縦横家)としています。ただ、これは資料がないので、伝説的なものと言わざるをえません。たとえば鬼谷子という人物の姓氏、事績ともに不明であり、隠棲していた鬼谷(山西省沢州府内)の土地をもって鬼谷というわけですから、実の名前でもないわけです。また、彼が残した資料や文献等もなく、彼がその創始者であるという確定できるものも存在しないので、これは中国の気功法や拳法などと同様に、あくまでも伝説的なものであると見なすのが無難でしょう。
起源は四柱推命と同じもの
算命学の本当の起源を求めるならば、ほぼ四柱推命と同じものに行き着くでしょう。現在の中国の文献で確認できる範囲では、四柱推命の現代的なスタイル(構造)は、12世紀に出現した徐子平という人物によるものと言われます。
それ以後もいろんな知識人たちにより研鑽され、徐大升の『淵海子平』、劉白温の『滴天髄』、萬育吾の『三命通会』と発展してきました。これは確認できる資料ですが、もちろんそれ以前にさかのぼることもあり得ますが、現時点ではここまでしか確認できません。
算命学も四柱推命も同じ干支暦を使う
算命学や四柱推命の最大の特徴は「干支暦」を使うという点にあるでしょう。それが西洋やインドの占星術と根本的に異なる点です。「干支暦」とは中国古来の陰陽五行思想に基づく暦です。この干支暦の起源は相当古く、中国古代の王朝である殷の遺跡から発掘されている点から、約3千年以上の歴史を持つと見ることができます。
中国では古代王朝からこの干支暦を正式な「王朝の暦」として正式に採用して使用してきました。その根底にはおそらく世界的にも当時の最先端にあった古代中国の天文観測技術があり、そこから干支暦の基が作成されたと考えることができます。そして歴代の王朝はこの干支暦を代々受け継ぎ、守り、王朝体制の行事の基礎に据えて権威化してきたのです。ですからこの暦の起源を四柱推命の始まりの基礎と見なせば、その歴史は3千年以上の歴史を持つことになります。
算命学と四柱推命の違いとは
四柱推命は干支暦を使って、その人の生まれ年・月・日・時の干支をそのまま配列していきます。それに「通変」や「12運」などを書き込んでいきます。一方で算命学はその干支暦から作成された命式(命盤)じたいを「オリジナルな暦」として使用します。私が使ってみた限りでは、星の解釈などに大きな違いはありません。その違いを一言でいえば「算命学は初学者向き」であり、「四柱推命は上級者向き」と言えるでしょう。
たとえば算命学では初心者でも理解しやすいように「表」などを適切に使用して、簡単に理解しやすいように工夫されています。一方で四柱推命は「通変」や「12運」等を使って、命式の特徴じたいを簡易的に把握する方法がありますが、それだけで命式の構造全体を把握できるわけでもありません。たとえば重要なものでも「日干の強弱」を読む作業、「干支の強弱」を読む作業、「干支の配列」を分析する作業などがあり、とても初学者が簡単にできるものではありません。それを考えると、算命学は初心者が入りやすいのは確かでしょう。
しかし算命学はいくつかの問題点があるのも考慮する必要があります。たとえば算命学では生年・生月・生日を使用しますが、「生誕時間」は使用していません。私が感じる最大の問題点はここにあります。他にも初心者には使いやすい「表システム」にも問題があります。簡潔に言えば、干支を表に変換してしまうと、そのエネルギーの盛衰が読めないという点にありますが、こうしたいくつかの問題点をクリアする必要があると言えます。この辺りの詳細については次回に論じることにしましょう。