八島高明の九星気学教室2

九星気学を検証する

九星気学とは大まかに言って前回に述べたような構成で成り立っています。日本においては昭和の時代を通じて人気のある占術の一つですが、しかし人気があるからといって単純には信用できません。九星気学の内容に関して一番の疑問点は「生まれ年を使って個人の資質を本当に判別できるのか」という点にあります。

 

九星気学ではその人の生まれた年を9つに分類し、その生まれ年の九星を使って「個人の本質的な要素」とみなします。そしてそれから吉凶の判定が出て来るものですが、私はまずそこに大きな疑問を感じるのです。

 

九星気学で生まれ年を使う理由

もし単純に生まれ年で個人の資質が決まるならば、たとえば小学校や中学校、高校の同級生などはすべて同じ資質を持つことになります。しかし私には同級生たちがすべて自分と同じ性格や気質を持つとは到底思えないのです。

 

それは生まれ月まで考慮したとしても同様でしょう。たとえば私には同じ年の2日違いの誕生日の友人(つまり同年同月生まれ)がいましたが、性格や気質はまるで異なっていました。同じ占術でも四柱推命や西洋占星術では「生まれた時間」がわずか数時間異なるだけでも、まったく異なる分類になることがあります。まず、この大きな疑問点を九星気学ではどのように解決するのでしょうか。そこに占術としての価値が問われると思うのです。

 

九星気学の大本は奇門遁甲か

九星気学はもともと中国にその大本となるような占術があり、それが中国から入ってきて日本独自に発展を遂げたと考えることができます。その点では風水や家相との関係にも似ていますが、では、その本来の起源とは何でしょうか。私はおそらく中国最高峰の占術の一つでもある「奇門遁甲」ではないかと考えています。

 

奇門遁甲は方位学としては抜群の信頼を誇るものです。それは私自身の経験からはっきりと言えることです。奇門遁甲を使い、これまで信じられないような劇的な経験を何度もしてきたものです。ただしかし、そこには問題点もあるのです。

 

奇門遁甲では「十干」「八門」「九天星」「八神」「九宮」という5つの要素を重層的に組み合わせて総合的に吉凶の判定をしますが、その使用法がまず難解であること。そしてまたその判断方法も難しく、さらには四柱推命の開運法と比較しても、その効果がかなり短期間で限定的であること。こうした複数の問題点もあり、実際には現代において「開運法」として使用するには、かなり難しい面があるのです。ですから精度の高い方位術であるにも関わらず、あまり使用する人は少ないようです。古代においては戦争などの戦術として利用されてきた経緯もありますが、それが大きな効果を上げた為に、それ以降は禁断の学として封印されてきたという歴史もあります。

 

奇門遁甲のそうした扱いにくさから、現代においてもかなりマイナーな占術となっていますが、こうした事情からその簡易版とも見える九星気学が持てはやされるようになったのかもしれません。こうした側面をみれば、日本の九星気学とはその原点である奇門遁甲の一部の構成要素である「九天星」「九宮」を取り出して日本独自の方位術として簡易的に作られたと考えられるのです。

 

日本で発展した九星気学とは

日本における九星気学の歴史はそれほど古いものではありません。大正時代に活躍した園田真次郎や中村文聡がその確立者であると言われます。

 

九星気学が日本で流行したのには理由があります。もともとの原点でもある奇門遁甲が日本ではほとんど知られていなかったというのが理由の一つでしょう。原点である奇門遁甲と九星気学を比較してみると、その違いがよくわかります。奇門遁甲を勉強した方はご存じかと思いますが、九星気学でメインとしている「九星」や「九宮」というのは、実は奇門遁甲ではメインとして使う要素ではなく、副次的に使用するものでしかありません。

 

奇門遁甲と異なる九星気学の方法

九星や九宮というのは、奇門遁甲にいおいては補助的、脇役的な要素に過ぎません。実際に、私は奇門遁甲を使用する際には九星や九宮の要素をほとんど考慮しません。なぜなら他の要素に比較して九星や九宮の効果というものがほとんど実感できないからです。その補助的な要素だけを取り出して、それをメインに据えて方位現象を判断するというのは、少なくとも私にはかなり無理があるような気がするのです。

 

この日本独自の方位占術でもある九星気学が作られたのが大正時代(1910~1925)ですから、中国の他の占術である四柱推命などと比較すると、占術としての歴史はだいぶ浅く、まだまだ統計的な面からの検証も為されていないと考えざるを得ません。こうした理由からは私は九星気学をまったく使用しなくなりましたが、世間ではまだまだ人気のある占術ですから、その効果を自分自身で検証してみるというのも一つの手でしょう。では、次回に続きます。次回はさらに方位術の内容をさらに深く検証してみましょう。

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2022年05月24日